運動機能の舵取り役小脳 [脳と体の不思議な関係]
運動機能の舵取り役小脳
小脳は、大脳の側頭部の下に位置していますが、大脳とは直接つながっていません。小脳脚という神経線維で中脳、橋、延髄などと結ばれています。
小脳は大脳と同様に左右2つの半球で構成されています。その大きさは脳全体の約10%と小さめですが、表面積は約75%に相当します。灰白質になっている表面全体は小脳皮質と呼ばれ、約1,000億個以上もの神経細胞が存在しています。1mm2あたり約50万個の神経細胞がびっしり詰まっていて、千分の一秒単位の速さで正確に情報を処理しています。そして小脳の深部には髄質があり、神経線維が木の枝のように細かく入り込んでいます。これらの神経細胞の働きによって、運動機能をコントロールしたり平衡感覚を保ったり、体で覚える学習や記憶を蓄積することができます。
例えば、揺れる電車の中で意識せずに真っすぐ立っていられるのは、小脳が持つ平衡感覚と耳の奥にある三半規管や耳石によるものです。三半規管の内部はリンパ液で満たされていますが、体が傾くとリンパ液が流れ出て、体の回転方向や速度が認識されます。水平についている耳石も傾きを感知します。これらの器官や全身の感覚神経から得られた情報は、大脳から脳幹を通して小脳に伝達伝達されます。そして、体の運動の命令が出されて平衡感覚を保てるようになるのです。したがって、小脳に障害が生じると、めまいが起きたり転びやすくなったり、片足で立つことができなくなります。
また、小脳には運動のパターンを記憶する機能もあります。自転車の乗り方や楽器の演奏など繰り返し練習して上達することを「体で覚える」といいますが、これは小脳が持つ運動機能や平衡感覚によるものです。小脳は、動きの連係プレーを覚える記憶措置でもあり、技能的な動作が繰り返し行われることで意識しなくてもできるようになります。なおかつ、一度習得した技能はなかなか忘れません。これを手順記憶と呼びます。例えば、ボールを受け取る時、どの指の関節を曲げて、手首はどのくらい傾けてキャッチするなどと意識していることはありませんし、ピアノを弾くときにどの指を伸ばして、どのくらいの強さでどの鍵を打つかを意識することもありません。このような滑らかで無駄のない動きをするには、小脳の活躍が欠かせないのです。
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